2006年04月27日

『青の時代』を考える

昨日の耐震偽装関係者逮捕以来、連日ニュースをにぎわせてきた人たちの動向が注目されていますが、ついにホリエモンの保釈が本日決定しました。
3ヶ月におよぶ拘留で彼の口から何も語られることはなかったようです。
もちろん、いろいろな事実関係は裁判を通じて明らかになるのでしょうが、マスコミ報道も世論の関心も、3ヶ月前とはガラリと変わってしまったことにあらためて驚かされます。
ホリエモン騒動やライブドアショックと名付けられ、まるで日本を揺るがす事態であるかのように騒がれたのは何だったのでしょう?
どうにも腑に落ちないので、今日は久しぶりにこの問題について考えてみたいと思います。

今風に言えば「東大生起業家」の山崎晃嗣が起こした「光クラブ事件」が、ホリエモン逮捕当時に注目されたのを覚えていらっしゃるでしょうか?
「光クラブ」とは山崎晃嗣が1948年に起こした金融会社で、月13%の高利回りを保証して資金を集め、その資金を月21から30%の高利で貸し付けるという事業内容をとっていました。
若い大学生が中心となって経営していたこと、派手な広告で注目をひく手法を用いたこと、1949年には銀座という東京の中心街にオフィスを構えたことなどが、ホリエモンとの類似性として指摘されたのでした。
警察に目をつけられて逮捕(物価統制令と銀行法違反)された山崎は、処分保留で釈放されますが、債権の取り立て問題に直面して最後には自殺をします。
一連の事件は、山崎自身の特異なキャラクターも相まって大きく取り上げられ、多くの人々の関心を引くことになりました。
この事件をモデルに三島由紀夫が小説化したのが、掲題の『青の時代』という小説です。

『青の時代』の主人公である川崎誠は、徹底した合理主義を標榜し、自分自身が神となりルールを設定するという支配欲を貫き、金以外のものを信用しないという虚無的な価値観を持つ人物として描かれています。
生活のためにやむを得ず金儲けに手を出したと述べる友人の発言を軽蔑して、「僕の金儲けには目的がないんだからね」と述べるくだり。
貸付利息と借入金利の差額から利益が捻出されるという実質的な信用よりも、派手な宣伝により人目をあざむく信用を重視していたというくだり。
「金は理解し、金が口をきく以外に、人間同士は理解される義務もなく、理解する権利もない、そういうユートピアを僕は空想したんだ」という最後の台詞など。
例を挙げればきりがないほど、ホリエモン騒動を考える上で興味深いことが次から次へと出てきます。

しかし、問題は小説の主人公そのものよりも、なぜ彼のような人物が現れ、脚光を浴びたのかという時代背景にあるはずです。
僕は三島の研究をしているわけではないので詳しくはわかりませんが、小説のタイトルが『青の時代』となっているように、ある種の時代性が背後に存在していることは間違いがないでしょう。
では、ホリエモンが注目を浴びた今を生きる我々は、この類似性からいったい何を学べば良いのでしょうか?

確かに「光クラブ事件」が起きた占領期も、バブル崩壊後の時期と同様に、社会の価値観や秩序が大きく混乱した時期であったのだと思います。
しかし同じ占領期にも、たとえばソニーやホンダなど、今日の日本を代表する企業も創業しているわけです。
後にカリスマと呼ばれるような起業家たちが、次々と起業をしているのです。
我々はホリエモン騒動の教訓として、日本社会の発展に寄与するような企業を応援すべきだということを、もう一度かみ締めるべきではないでしょうか?

人材育成やベンチャー支援などを行う株式会社「グロービス」の代表である堀義人氏は、「社長TV」http://www.shachotv.jp/)というネットコンテンツのなかで、「社会の創造と変革のためのインフラづくり」が経営理念であると発言しています。
確かにアジアNo.1のビジネススクールをつくるという野望も語っていますが、同時に200年後、300年後に残る大学院づくりをしたいとも述べています。
こういう社会にいかに貢献するかという長期的な視点、これこそが我々が本当に求めている社長像なのではないでしょうか?
ホリエモンが釈放されれば、またいろいろと世間を騒がせることになるでしょう。
一方で社長TVには、この他にもさまざまな社長のインタビューが掲載されています。
メディアの一時的な注目に踊らされることなく、どういう社長が世の中を良い方向へ変えてくれるのか見極める参考にしたいですね。
posted by SNR at 19:30| Comment(0) | TrackBack(6) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月25日

「本日も気をつけて、いってらっしゃいませ」

僕が毎朝乗る通勤電車は、私鉄と地下鉄でJRではありません。
ラッシュ時間にはしばしば列車の順番が入れ替わるほどの混雑ぶりなので、いつもというわけではありませんが、ものすごく丁寧に車内アナウンスをしてくれる車掌さんに当たることがあります。
乗り換え客の多いターミナル駅が近づくと、駅名と乗り換えのアナウンスをした上で、
「いつも○○線をご利用いただきありがとうございます。本日も気をつけて、いってらっしゃいませ」とひとこと付け加えてくれるのですが、これが全然嫌味じゃなく心地よいのです。
最近、味気のないアナウンス音に慣れてしまっている僕にとって、微笑ましい朝の光景のひとつとなっているくらいです。

みなさんすでにご存知でしょうが、今日でJR福知山線脱線事故から1年が経ちました。
そしてまたこれも大きく報道されましたが、山手線が昨日5時間以上もストップするというトラブルがありました。
道路の拡張工事で高架を支えるコンクリートを注入する際に、圧力がかかり過ぎて線路が5cmほど隆起したのだそうです。
一歩間違えれば列車が転覆する危険性もあったということで、大事には至らなかったとはいえ、またもや公共交通機関の信頼性を揺るがす結果となってしまいました。

さて、福知山線の事故から1年が経過して、いったい何が変わったのかが問題です。
報道によれば、事故原因の究明も被害者への補償も、ほとんど進んでいないというのが現状のようです。
国土交通省の事故調査委員会による最終報告が出るのは来年の春になってしまうようです。
被害者との補償交渉についても、被害者側の感情と補償額のバランスなど、難しいことも多いのでしょう。
しかし、こういったものすべてをトータルで、利用者側は見ているわけです。
単に新型のATSを設置したかどうかなどの安全対策だけでなく、JR西日本が会社としてのどのような姿勢をとっているのかということ自体を見ているのです。

一時期問題にされた日勤教育について、これが本当に事故原因のひとつになったのかどうかはわかりません。
でも、鉄道会社で我々が常に接する機会があるのは、電車の運転手や車掌、そして駅員の人たちです。
これらの人々が自分たちのサービスに誇りをもって、楽しく余裕をもって働いているかどうかというのは、安全性という面でも、とても大切なことだと思いませんか?
冒頭に書いた車掌さんのように、余裕をもった心遣いができる人たちが増えていくことを、心から祈りたいと思います。
posted by SNR at 19:07| Comment(4) | TrackBack(1) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月21日

「山笑う」季節に誰が笑っているのか?

民主党がメール問題からの立ち直りを見せつつある一方で、
国民的な議論を巻き起こすことなく行政改革推進法案が衆議院を通過してしまいました。
姉歯元建築士の名義貸し、木村建設の粉飾疑惑、イーホームズの架空増資疑惑と、
耐震偽装問題の関係者たちの不正疑惑が次々と報道され始めています。

桜も散り新緑の季節がやってきましたが、何か変だなという気がしませんか?
行政改革を正しい方向で進めていくことも、耐震偽造問題の原因を明らかにして改善をしていくことも、どちらも重要な問題であるはずですが、マスメディアはそれをしっかりと伝えているのでしょうか?

行政改革推進法案が衆議院で審議され始めたのは4月2日のことでした。
景気回復の波を続行させること、無駄な歳出削減によって財政再建を図ること。
どちらにとっても重要な法案が、この行政改革推進法のはずでした。
しかし、テレビを中心としたメディアがこぞって取り上げていたのは、民主党の代表選挙に関する話題で、登場してくるのは、渡部恒三国対委員長や小沢一郎新代表の顔ばかり。
かんじんな法案の中身については、ほとんど報道されませんでした。
一方で、しばらくニュースがなかった耐震偽装問題ですが、こちらは姉歯元建築士の名義貸しや、木村建設の粉飾疑惑、イーホームズの架空増資疑惑と、またもや犯人探しの報道ばかり。

春の季語に「山笑う」というものがあります。
新緑が次々と芽生えてくるこの季節に、確かに「山笑う」という表現はぴったりなのでしょう。
しかし、どうやら国民にとってあまり喜ばしくない「笑い」を浮かべている人たちがいるような気がします。
先ほど挙げた2つの例を見れば、みなさんはお分かりになりますね。

行政改革推進法の最大の焦点は、公務員の削減であると言われています。
国家公務員を5年で5%以上純減、地方公務員を4.6%以上純減など、有権者にはそれらしい数字が踊っていますが、本当に大切なことはスリムで効率的な政府を目指すことであるはずであり、単なる数合わせではありません。
無駄な特別会計を廃止したり、不透明な随意契約や談合をなくしたりなど、有権者が圧力をかけて進める改革はいくらでもあるはずです。
しかし、そういう議論も起こらないままに、与野党議員のパフォーマンスの影で法案は通過していこうとしているわけです。

一方の耐震偽装問題も、本当に責任や改革を迫られているのは、偽装をやすやすとできるような仕組みをつくってしまった政府であるはずです。
イーホームズを確認資産機関として認可したのは国ではなかったでしょうか?
こちらもそういう議論が起こらないままに、関係者への捜査ばかりが取り上げられて、まるで問題が解決していくかのような錯覚が与えられているのです。

「山笑う」季節に、もっとも大きな「笑い声」をあげているのは、もしかしたら官僚たちなのかもしれません。
posted by SNR at 18:39| Comment(2) | TrackBack(10) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月18日

日経新聞の壁

朝の地下鉄に乗り込むと、僕の周りには次々と壁が立ち並んでいきます。
毎朝の通勤電車で見られる光景、名付けて「日経新聞の壁」です。

通勤車内で圧倒的に読まれているのは、やはり日経新聞ですよね。
みんなそれぞれ器用に折りたたみ、僕をぐるりと完全包囲してしまうわけですが、当の僕が一生懸命読んでいるのは、『司馬遼太郎が考えたこと』。
この前まで読んでいたのは、谷崎潤一郎の『陰翳礼賛』でした。
ちなみに、新聞は仕事に出かける前に、朝食を食べながら読むというのが、昔から染みついてしまった僕の癖なので、電車の中ではお気に入りの本を手にすることに決めているのです。

目の前に立っている、どこからどう見てもピカピカの新入社員すら、一心不乱に日経新聞を読んでいるのに・・・。
ちょっと不安になりかけた僕の目に、ドアの傍で文庫本を読みふけっているキャリア・ウーマンらしき女性の姿が留まります。
一生懸命、目を凝らして見ると、なんと読んでいるのはアレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』!

いわずと知れた、主人公のエドモン・ダンテスが無実の罪で投獄され、そこから脱獄して巨万の富を得て、自分を陥れた人々に復讐をしていくというお話です。
こんなふうに概要を書いてしまうと陳腐なストーリーのようですが、実際には岩波文庫版で全7巻に及ぶ大作であり、人生の悲哀や登場人物の苦しみなど、胸をえぐるような濃密な描写が詰め込まれたものなのです。
もちろん、僕が『モンテ・クリスト伯』を読んでいる女性に共感を覚えたというのが、今回の主題ではありません。
あくまでも「日経新聞の壁」が今回のテーマです。

なるほど、日経新聞にはビジネスの世界で働く人々にとって、貴重なデータがたくさん載っています。
しかし、明日になればすぐにとまでは言いませんが、しばらく時間が経てばゴミ同然となってしまう情報がたくさん掲載されているのも事実です。
もし、朝の通勤電車で「日経新聞」さえ読んでいれば足りると考えている人がいるとしたら、それこそ「日経新聞の壁」なのではないでしょうか?
司馬遼太郎にしても、谷崎潤一郎にしても、デュマにしても、人生や社会のいろいろな局面で参考になる、さまざまな教訓に満ち溢れています。
そうした教訓から得た力を実際に生かすことこそ実は重要なのではないでしょうか?

「日経新聞」についても、折角の貴重な情報を読み解いて、それを実戦で活用する力こそが大切となるわけです。
もちろん、電車の中で何を読むかは各自の自由で、余計なお世話なんですけどね。
「日経新聞の壁」に取り囲まれながら、ついついそんなことを考えてしまうこの頃です。
ちなみに、今日の一面トップに掲載された「病院・介護施設専門ファンド」の話は、なかなか面白かったですけどね。
posted by SNR at 20:10| Comment(0) | TrackBack(1) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月14日

二大政党というフィクションを超えて

ずいぶんと長い間お休みしてしまい、久しぶりの記事アップとなります。
みなさん、お元気ですか?

さて、お休みしている間にも、いろいろなことが起きましたね
小学校高学年への英語必修化、沖縄普天間基地の返還問題、教育基本法の改正問題等々です。
このようにブランクを空けてしまうと、どのテーマから再開しようか困ってしまうのですが、
今日は新たに小沢氏を新代表に選出した民主党について取り上げたいと思います。

小沢新代表が「ニュー小沢」を掲げて、党内融和を図りながら、戦う姿勢を見せていることは、みなさんもご存知のことでしょう。
野党が与党に戦いを挑むのは当然のことですし、受ける自民党の側も戦闘姿勢を見せており、これは歓迎すべきことだと思います。
前原前代表のときは、子ども扱いされている面が目立ちましたからね。

しかし、ここでひとつ忘れてはならないことがあると思うわけです。
今回の騒動の発端となった、永田前議員も未熟ながらもメール問題で戦う姿勢を見せていたということです。
ただ、何が問題であったかあというと、「戦う姿勢ができていないのに、無謀な戦いを挑んでしまった」。
これに尽きるのではないでしょうか?
僕個人はこうした無謀な戦いを挑んだ背景に、「二大政党というフィクション」があったのではないかと思います。

太平洋戦争に突入していく日本陸軍に、面白いエピソードがあります。
日本陸軍は攻撃力も防御力も格段に違う自軍の戦車を、戦車であるからにはどの国の戦車も同じであるというフィクションを前提にして戦っていたのです。

またもや戦争の反省かと思う方には、不良債権の話をしましょう。
バブル崩壊後、長期に渡って不良債権は存在しないというフィクションを前提に、その処理を徒に遅らせてきたことは、みなさんの記憶にも新しいでしょう。
こういう事例はいくらでも転がっています。
例えば、年金制度は安心というフィクションを前提に行った年金制度改革や、株式時価総額というフィクションを前提にM&Aを繰り返していたライブドア等々です。

フィクションは大きくなればなるほど、繰返し唱えれば唱えるほど、後々から見れば奇妙なほどに、人間や社会の行動を規定してしまうものなのではないでしょうか?
民主党の場合も、「昨年の総選挙で大敗を喫したとはいえ、二大政党なのだから、自分たちには政権をひっくり返す力があるのだ」という、フィクションに基づく安易な発想があったとは言えないでしょうか?
そしてメール問題で、情報力や組織のマネジメント能力という点で、まったく比較にならない政党であることを見事に露呈しまったというわけです。

新たに発足した小沢民主党は、職員を含めた組織をしっかりと立て直し、たとえ小さな勝利であっても、地に足の着いた政治活動で得る必要があるのではないでしょうか?
健全な野党のないところに、健全な与党は育たないわけですから。
まずは千葉7区での補選を、有権者もしっかり見つめていきたいものですね。
posted by SNR at 20:22| Comment(4) | TrackBack(3) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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