その一方で、ものごとの本質をつかむことが、なかなか容易でないことも承知しているつもりです。
それにしても、ここ数日間のニュースを見ていると、大きな疑問を抱きませんか?
まずは、大阪などの社会保険事務所で4万人以上に年金納付の不正免除を行っていたという事件です。
いわゆる「年金納付率」偽装という話です。
村瀬長官が出した「『国民年金の収納率』緊急メッセージ」という文書の存在が明らかとなり、組織防衛のためにノルマ2ヶ月以内に2%アップを課していたことが判明して大騒ぎになったようです。
年金制度に対する信頼回復こそが最重要課題であることは、国民の目からは一目瞭然なのですが、社会保険庁内にいると、どうやらその本質が見えなくなるようです。
大手銀行の3月期決算が発表され、大手銀行6グループはバブル期を超える過去最高益を記録しました。
特に三菱UFJの連結最終利益は1兆円を超えてトヨタに迫る勢いだったわけですが、与謝野金融担当相のコメントは「決算は良くなってきているが、我々にしてみればまだ半人前だ」というものでした。
すでに指摘されているとおり、今回の過去最高益の背景には、不良債権処理に積んでいた貸倒引当金が景気回復のために不必要となった戻り益の存在がありました。
つまり企業業績が回復したことで貸し倒れが減った分だけ、利益となって戻ってきたわけで、これは銀行の経営努力の結果ではありません。
それだけでなく、投資信託などの金融商品の窓販で得た手数料収入も、利益をかさ上げする大きな要因でした。
そもそも、銀行が本業として行うべき預金と投資信託は競合商品です。
多くの預金者がゼロ金利状態に業を煮やして、投資信託などの金融商品へと乗り換えたわけですから、そこで手数料が増えても本業による利益ではありません。
銀行利用者に対して本業でサービスを行うことが最重要課題であることは、利用者の目からは一目瞭然なのですが、金利変動に伴うリスクに怯える銀行は、本質をきちんと理解できているのでしょうか?
最後に、教育基本法の前文をめぐり、「我が国と郷土を愛する態度を養う」という政府案と、「日本を愛する心を涵養(かんよう)する」という民主党案が対立しており、この点が象徴的に報じられています。
いわゆる「愛国心」についての議論ですが、今国会内で可決に持ち込むか、会期延長を行うのかといった、政治的駆け引きの材料に使われているようにしか見えません。
確かに、国民が自らの国を愛せないような国家は不幸ですし、そんな社会の活力は徐々に削がれていってしまうでしょう。
しかし、だからとって「愛国心」とは教育で強制するようなものなのかというのが、反対論者たちの意見です。
しかし、それ以前の問題として、国家の成り立ちや政府の仕組みについて、我々はどれほどしっかりとした教育を受けたというのでしょうか?
しっかりと理解していないものを、ただやみくもに愛せと言われても、そこに健全な民主主義が成立しうるはずがありません。
日本という国の成り立ちや仕組みを教えることが最重要課題であることは、国民の目からは一目瞭然なのですが、国会議員の先生たちは本質を理解できていないようです。
以上3つの問題について、みなさんの目にはどのように映っていますか?