2006年02月13日

「記憶を失った街」は「こころを失った街」?

2月11日に、表参道ヒルズがオープンしました。
80年近くも表参道の顔であった同潤会青山アパートが取り壊され、そこに商業スペースと住居スペースの複合施設が建てられたのです。
同潤会アパートの取り壊しが議論されたことは、みなさんの記憶にも新しいことでしょう。

今回の設計を行ったのは建築家の安藤忠雄さんです。
安藤さんは同潤会アパートを同潤館という形で再現しただけでなく、本館内部のスロープは表のケヤキ並木と同じ勾配に、建物の高さもケヤキ並木を越えないようにすることで、これまでの景観とのつながりを維持しようと設計しました。

かねてから僕は東京には街づくりというコンセプトがまるでないと感じていました。
再開発が行われるたびに、バカのひとつ覚えみたいな塔が次々と建っていく様子に違和感を覚えていました。
別に金太郎飴のような街並みをつくれというわけではありません。
その街がもつ個性や価値というものを大切にした建物づくりが行われているようには、どうしても見えなかったのです。

2月10日放送の『ニュース23』における、筑紫キャスターと安藤さんの対話はなかなか興味深いものでした。
上述したような問題意識が繰り返し述べられていただけでなく、安藤さんが表参道ヒルズで実現したかった「風景を通じた現在と過去の対話」を行うことの大切が伝わってくる内容でした。
また長寿社会に向かっている今日だからこそ、単に街の機能性を追及するだけでなく、そこに長く住む楽しみを重視すべきだという主張もうなずけるものでした。

話が少し飛躍するようですが、街を次々と無計画につくりかえることは、その街に暮らした人の記憶やこころを奪っていくのと同じようなことだと思います。
なぜ我々は敢えて街並みから「記憶やこころ」を払しょくしようとするのでしょうか?
海外旅行などに行けば喜んで歴史的街並みを見物する人たちが、なぜ自分たちの街並みをいとも簡単に捨ててしまうのでしょうか?
自分たちの「記憶やこころ」を軽んじるようなことをするのでしょうか?

もちろん、木造建築物が焼失や腐敗に弱いこともひとつの要因でしょう。
あるいは、古い建物を維持したり、再現したりするコストが高いことも要因のひとつでしょう。
しかし、そこで失われる我々の「記憶やこころ」にもうちょっと配慮をしても良いのではないでしょうか?
少なくとも耐震基準に満たない無価値なマンションを乱立させるよりも、はるかにマシなことだと思います。

丸の内にも三菱一号館の再生計画があるようです。
街の持つ「記憶やこころ」を重んじる機運が高まることで、単に耐震基準を満たしているだけでなく、後世にも我々の「記憶やこころ」を伝えていけるような建物づくりが進むことを願います。
posted by SNR at 21:30| Comment(9) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
SNRさん、はじめまして。
TBどうもありがとうございました。

「記憶とこころ」を大切にした街開発…私も大いに賛成です。

「新同潤会」は、何十年後かに以前のような蔦がからまることも考えられているそうですね。
本当に素晴らしいと思いました。
その様子を見るのも楽しみです^^
Posted by karel at 2006年02月13日 23:46
karelさん、コメントありがとうございます。
蔦がからまった「新同潤会」!楽しみですね。僕は大学のキャンパスでも、蔦がからまった古い建物のほうが好きでした。
Posted by SNR at 2006年02月14日 10:34
TBありがとうございます。
本当に表参道ヒルズの建築が、安藤忠雄さんの手によってなされたことに、感謝するばかりです。

彼ほど「街づくり」に関して、ビジョンを持っている建築家さんって少ないのかもしれませんね。でも、建築家の役割って本当に大きいのに…。

まさに「街づくり」のコンセプトがないまま高層ビルが次々と立ち続けているエリアで働いている私。少しずつでも住みやすい、暮らしやすい、働きやすい都市が増えることを願っています。
Posted by 亜基 at 2006年02月14日 11:35
亜基さん、コメントありがとうございます。
東京に住んで働いていると、雑多な空間に慣れてしまいがちですが、精神的な豊かさも大切にしたいですね。安藤忠雄氏の講演は僕も聞いてみたかったです。
Posted by SNR at 2006年02月14日 12:24
TBありがとうございます。
ツタが這い、かつての同潤会アパートのように呼吸が感じられる建物になるのはまだまだ先でしょうが、その経過を見られる自分たちは幸せなのかもしれないですね。
Posted by MR.K at 2006年02月14日 12:53
MR.Kさん、コメントありがとうございます。
それはとても良い楽しみ方ですね。我々の記憶やこころも一緒に刻まれていくということになりますしね。過去とのつながりを維持しつつ、これから歴史をつくっていくわけですね。
Posted by SNR at 2006年02月14日 14:38
青山のニュースを知った時、嬉しかったです。静岡は、不釣合いの建物が建ち、時には街路樹が倒されていきます。昔のものを大切にする=人を大切にすることだと思います。歴史・文化・自然を自分達の財産と思う事って、子供の心を育てるのではないでしょうか。
Posted by 浮き草 at 2006年02月14日 22:32
残念ながら、日本の現代の街には、都市餅くは街全体のマスタープランが無いのです。
江戸時代まではあったように思いますが。

これが混乱した印象を与える街にしてしまったのだと思います。

安藤さんはすばらしいですね。
Posted by baka-inu at 2006年02月15日 09:29
浮き草さん、baka-inuさん、コメントありがとうございます。
浮き草さんのおっしゃるとおり、「こころの教育」にとっても大切なことですね。なるほどと思いました。政府や自治体が上からつくるマスタープランも必要かもしれませんが、一般の市民がビルドアップしていく街づくりも大事なのでしょうね。
Posted by SNR at 2006年02月15日 10:17
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