2006年01月29日

ナベツネさんの正論と限界

読売新聞の渡辺恒雄会長の言論活動が活発になっています。
僕は『論座』に掲載された対談を読んでいませんが、筑紫哲也氏とのテレビ対談は見ました。
主な論点は、ホリエモンに代表されるような市場経済原理主義への警鐘総理の靖国公式参拝への反対であったように思います。

犬猿の仲であった読売と朝日が手を組んだと話題になりましたが、僕から見れば至極全うなことを仰っているなというのが感想です。
特に靖国参拝問題については、なかなか重みと迫力がある発言であると感じました。
80歳の大台を手前にして歴史を知る人間として発言をしなければならないという気迫はもちろんですが、ソ連の日ソ中立条約破棄に伴う侵攻とシベリア抑留について日本人が抗議する資格について述べた点も説得力がありました。
東京裁判には問題点があるかもしれないが、まずは自分たちの身を正してからでなければ、相手の戦争犯罪行為に対しても抗議できない。
まさに正論で、おっしゃるとおりだと思います。

市場経済原理主義に対する警鐘も間違っていないと思います。
行き過ぎた市場原理の信奉はモラルハザードを生み、却って市場全体の信頼を喪失する危険性を孕んでいます。
それだけではありません。
政府が出した統計は因果関係を否定しましたが、富の配分に偏りが生じて貧富の格差を助長する可能性もあります。

しかし、こうした正論が既成勢力の既得権益維持の方便に用いられるとしたら、これを看過することはできません。
「若者は歴史を知らずに靖国参拝を支持している」「マネーゲームに興じる若者がホリエモンを支持した」、だから若い者はダメだというような空気があるのを感じてしまうのは僕だけでしょうか?

「構造改革」「財政再建」「人口減少時代」「格差社会」等々と、ニュースはさまざまなキーワードで溢れていますが、「少子高齢化」の時代だからこそ「世代間の対立」という問題を、もっと真剣に考える必要があると思います。
ホリエモンのような現象が起こった時代背景として、昔からよくある錬金術のマネーゲームと見るのは短絡的ではないでしょうか?
若い世代の強い不満と閉塞感があったことをしっかり認識しなければ、今後も同じようなことが繰り返されるだけではないでしょうか?
プロ野球参入に際して「ボクの知らんヤツはダメだ」と言った彼の真意は分かりませんが、多くの人が新規参入の門戸は閉ざされているのだという印象を持ったことは間違いないと思います。
今回のライブドア・ショックで、若くして成功するためにはやはり法を犯すくらいのことをしないとダメなのだというムードになってしまってはいけないと思うのです。

ちなみに、僕自身はマネーゲームには何の関心も持っていません。
おカネよりも、もっと大切なことがあると思っています。
それでも、いまの日本社会はまだまだ閉鎖的だと思っています。
たとえしっかりとした実業のための能力を持っていたとしても、おカネや知名度がないと個人が成功するための機会すら掴みにくい世の中だと感じてしまいます。

確かに渡辺常雄会長のおっしゃるとおり、自分を含めて若い世代は歴史の知識が少ないと思います。
しかし、あの無謀な戦争へと突き進んだ背景には、貧富の格差と若手軍人の鬱積した不満があったことをお忘れじゃないでしょうか?
国内で「昭和維新」と称してクーデータを繰り返し、対外的には「満州は日本の生命線」と称して拡張を続けていった背景には、農村部の貧困と政界や財界などの既成勢力に対する強い不満があったことを…。

あのときの失敗を二度と繰り返さないためにも、今回のことを機に若い世代にも開かれた社会のあり方を、しっかりと考えていただきたいものですね。
posted by SNR at 18:51| Comment(6) | TrackBack(2) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今回の発言でナベツネさんをちょっと見直しました。大陸で戦ってきた義父も、やはり、ナベツネさんと同じことを言っていました。

>たとえしっかりとした実業のための能力を持っていたとしても、おカネや知名度がないと個人が成功するための機会すら掴みにくい世の中だと感じてしまいます

なるほど。若い方のご意見は、とても参考になりますわ。( ..)φメモメモ。
トラックバックありがとうございました。
Posted by pirikara710 at 2006年01月30日 16:13
pirikara710さん、コメントありがとうございます。
ナベツネさんにしても、ホリエモンにしても、極端なネット世論が散見されますが、是々非々で臨みたいなと思っております。トラックバックもありがとうございました。
Posted by SNR at 2006年01月30日 17:55
 トラックバック有難う御座いました。若い方なのですね。こちらは初老です(笑)。
 ナベツネ氏の今回の発言には真っ当なところもありますが、だからといって戦後保守界をリードし現在のような閉塞感漂う社会を作った張本人の一人であることを忘れてはいけません。
 いわばアメリカ大統領が、自らの育てた「テロリスト」に報復され、あわてて「民主主義」を持ち出すようなもの。ナベツネ氏が現代社会に危機感を持っているとしても、それは自らのリードしてきた保守的社会(after911さんのおっしゃるように閉鎖的なプロ野球界・財界を作ったのは誰なのか)が、彼の思惑を超え「行き過ぎ」たからでしょう。それを若者の無知や思慮のなさに責任転嫁するのは、あまりにも自己反省がなさ過ぎるようにも。
 ですから単純に「世代論」も持って行くことの安易さは批判されるべきだというご意見には賛成です。世代に関わらず現代社会の問題点を多様な角度から見つめつつ、多様な批判を展開する必要こそが求められると思われます。(なかなか立派なHPですね。今から散歩してみます)
Posted by 立花 at 2006年01月31日 12:03
立花さん、ご丁寧にありがとうございます。
アメリカとアルカイダの関係は良いたとえですね。いずれにしても、閉塞感が生んだ暴走や排外主義について、若い人たちもちゃんと歴史を学ぶ必要があると思います。ナベツネさんの言葉を逆手にとるならば、年配の方たちに指摘されないように、しっかりと歴史を学ばなければいけないのではないでしょうか。
Posted by SNR at 2006年02月01日 18:43
戦後教育の欠陥は近代史・現代史が学期末なのと意図的に触れたくないということも手伝ってか殆ど教えられて来なかった点です。
もっとも日本の歴史とは、いいくに(1192)作ろう鎌倉幕府 みたいに出来事を覚えるだけで、「なぜ起きたのか?」を議論するのはタブーでした。
靖国神社に遊就館という近代歴史博物館があります。この内容は優れもので、日本を取り巻く当時の状況など良く解説されています。高校の修学旅行のコースに是非入れるべきと思います。
Posted by atoms2028 at 2006年02月12日 21:05
atoms2028さん、コメントありがとうございます。
近現代史がおざなりなのは問題ですし、おっしゃるとおり歴史観とまでは言いませんが、因果関係すらもしっかり教えられませんよね。
同時代の政治・経済・文化がぶつ切りにされるだけでなく、時代を超えた流れも見えませんね。たとえば、鎌倉時代は幕府ができたとはいえ、平安時代からの旧勢力が依然としてかなりの土地を支配していたのが現実ですが、そういう状況は見えにくい教え方になってますね。
コメントを書いていたら、日本の歴史教科書の問題を取り上げようなかなという気になってきました。ありがとうございました。
Posted by SNR at 2006年02月13日 11:18
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