2006年06月15日

これからの鉄道が果たすべき使命とは

少し前のことですが、阪急ホールディングスと阪神電鉄の統合が実現することになりました。
戦後初の私鉄再編が行われることになりそうですが、そのメリットとはどのようなものなのでしょうか?

5月24日に開かれたアナリスト向け説明会で、阪急HDの角社長は経営統合のメリットを4つ取り上げたそうです。
まず1つ目が都市交通事業による統合効果で、阪急・阪神の共通乗車券を発行すること、バス事業の一体運営によるコスト削減(操車場の統合削減など)、あるいは運行ダイヤ連動によるサービス向上などです。
2つ目が梅田地区の総合開発で、JR大阪駅北地区の再開発を、西梅田を拠点とする阪神と北梅田を拠点とする阪急が連動して行うことが想定されているようです。
3つ目が不動産事業で、住宅供給実績に富んでいる阪急と賃貸中心の経営の阪神が、統合により相互補完的に事業を進められるというものです。
最後に4つ目がリストラによる経営の効率化が挙げられるのだそうです。

さて、上記の4点について、僕自身は関西に住んだ経験がないため、どれほどのメリットであるのか実感がありません。
しかし、「村上ファンドの登場による仕方なしのものでなく、積極的な経営統合である」ということを主張するにしては物足りなさを感じてしまうのですが、みなさんはいかがでしょうか?
これまで関西でも関東でも、各私鉄会社は地域的な住み分けができており、運賃体系もビジネスモデルもほぼ横並びを続けてきました。
今回の角社長の説明も、@電鉄事業、Aバス・タクシー事業、Bターミナル駅での百貨店・ホテル事業、C沿線の住宅開発と不動産事業、という従来のビジネスモデルの枠を出るものではありません。

少し時代を遡って戦前の地下鉄に話を移してみましょう。
日本でもっとも古い地下鉄が今の東京メトロ銀座線であることは、みなさんもご存知かとは思いますが、渋谷−新橋間と上野−新橋間が別々の路線としてつくられたことを知らない方もいらっしゃるかもしれません。
上野−新橋間をつくったのは東京地下鉄道株式会社で、この会社を経営していた早川徳次という人は、新たなビジネスモデルをつくりだす才能に溢れた人でした。

例えば、建設途中で資金に行き詰ってしまったため、日本橋三越と交渉して駅名を「三越前」とする代わりに工事費用を捻出させてしまった話はあまりにも有名です。
今で言うところの「ネーミングライツ」のはしりですね。
あるいは、上野駅構内に「地下鉄ストア」という形でお店をオープンさせますが、これはJR東日本の「エキュート」や東京メトロ表参道駅の「エチカ」と同じ、「駅ナカビジネス」の発想です。
この後、神田駅、日本橋駅、銀座駅、新橋駅にも「地下鉄ストア」をオープンさせます。
現在では神田駅須田町出口方面に4店舗が残るのみだそうですが…。

このような新しいビジネスの発想を持った経営者は、もう現れないのだろうかと考えていたところ、小田急電鉄について面白い記事が紹介されていました。
小田急線は高架複々線化工事を行ってきているのですが、その高架下のスペースに系列スーパーや保育所、他社のホームセンターなどを誘致して、来年度の関連事業売上高を昨年の2倍に引き上げようというのです。
特に好感が持てるのは、商業施設だけでなく地元自治体の福祉施設や自治会館なども入居するというパブリックな要素が盛り込まれている点です。

これからの鉄道は単なる駅前や駅ナカの開発だけでなく、鉄道路線というインフラをフル活用することが求められていると思います。
そのなかでも、沿線の街づくりに貢献できるような開発を行うことと、利用客に快適で便利な通勤・通学を提供することが必要だと思います。

すでに、高架複々線化による混雑緩和に取り組み始めている小田急ですが、高架下の有効利用で街づくりに貢献して、さらにそこから得られた収益ですでに開始されている、自動改札を通過する際に携帯電話にメールで沿線情報配信する「小田急グーパス」などのサービスを充実させる。

こんなふうに新しいビジネスモデルを展開していくような発想が、他の私鉄でも次から次へと出てくれば、沿線もどんどん活気づいていくと思います。
これまでのビジネスモデルの枠を出ない、単なる規模の追求と効率化だけでは、あまりにも寂しい統合だとは思いませんか?
posted by SNR at 19:41| Comment(3) | TrackBack(6) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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